就職浪人の末、現在の会社に入社して2年目となるKさん(26)。業務上、ノートパソコンは必携だ。
ある夜の仕事帰り、Kさんは、久しぶりに学生時代の友人らと集まり、かなりの量のお酒を飲んだ。みんなと別れ、電車の座席に座ったKさんは、すぐに眠りに落ちてしまった。
「次は▲▲~」というアナウンスの声で目が覚めたKさんは、あわてて電車を降りた。『乗り過ごさなくてよかった』と思った次の瞬間、パソコンが入ったかばんを網棚に置いたままだったことを思い出し、一気に酔いがさめた。すぐに駅員に連絡し、探してもらった。しかし、Kさんのパソコンが入ったかばんは、出てこなかった。
翌朝、パソコンを紛失したことを上司に報告したKさん。パソコンに保存されていた情報について、細かくリストアップしてみると、顧客約200人分を含む500人分以上の個人情報と多数の業務情報が含まれていることがわかった。把握できないほどの数のメールもある。
しかし、Kさんは、パソコンや大事な顧客情報のファイルにはパスワードを設定していたので安心していた。パソコンを立ち上げることすらできないだろうと・・・。
それから2週間ほど経って、Kさんは、複数の顧客から「最近急に迷惑メールが増えた」という話や「怪しい電話や不正請求の郵便が届くようになった」という話を聞かされていた。『まさか・・・』と思っていたある日、Kさんは上司に呼ばれた。2週間前に紛失したKさんのパソコンがそれらの原因である可能性が非常に高いという事実を告げられたのだった。
Kさんは、パソコンやファイルにパスワードを設定していたが、それは簡単な英単語をそのまま使ったものだったのだ。しかも、すべてに同じパスワードを使っていたため、Kさんが紛失したパソコンを手に入れた悪意ある第三者は、いとも簡単にパスワードを解読し、500人分以上の個人情報などを悪用できたのだ。
Kさんの会社は、顧客情報などが入ったKさんのパソコンが紛失したことは、パソコン紛失が発覚してすぐに公表していた。しかし、パスワードをかけていたにもかかわらず情報が漏えいした可能性があることを再度公表すると、多くの顧客から非難を受けた。
その後、Kさんの会社は顧客からの信用がガタ落ち。Kさんの顧客だけでなく、他の社員が担当していた顧客も多数失ってしまった。
Kさんは、会社に居づらくなってしまい、ほどなく退社した。自分がパソコンを紛失したことが、会社の信頼を落とすことにつながったことに責任を感じた結果の退社だった。苦労して入社した会社を、こんな形で辞めることになるとは、Kさん自身予想もしていなかった。
退社してしばらくは、ショックのあまり部屋に閉じこもっていたという。「ようやく再就職に向けて動き出したんですけど、ダメですね」と話すKさん。面接で正直に退社理由を話すと、とたんに雲行きが悪くなるとのこと。
Kさんが心から笑顔を見せる日はいつになるのだろうか・・・。